「あら、ごめんなさい。恋愛のジャンルの殿下ですものね。こういう暗殺とか謀略とかのジャンルで人気のある筋書きなんて、わからないわよね」
「クミ、そういう問題じゃないんだ。それは、ぼくもわかっている。だけど、リアルに命を狙われたり殺されたりする身になってほしいな」

 アレックスの形のいい口角は、少しだけ上がっている。

 苦笑するにもカッコつけるのね。さすがはスケコマシだわ。

「殿下、大丈夫」

 テーブルに身を乗りだし、手を彼の右手に重ねた。

 こういうシーンで、女性が男性に、あるいは男性が女性にかならずといっていいほどする仕草である。