彼女たちのコソコソ話がきこえてくる。そのうしろを通ろうとしたけど、書架と書架の間が狭いのでどうしても声をかけざるを得ない。

「あの、すみません。通してもらっていいですか?」

 彼女たち、なんだか小説の筋書きをバラすバラさないでもめ始めたみたい。だから、控えめにお願いした。

 以前のデブデブのわたしだったら、この書架の間じたい横向きに通らないと通れなかったはず。だけど、いまはちょっとどいてくれれば、スススッと通りすぎることが出来る。

「す、すみません」

 一人が言い、全員が片端によってくれた。

「あの、ぶしつけですが……」

 通りすぎようとした瞬間、一人が言ってきた。大きな瞳が魅力的な()である。

「どう思われますか?」
「はい?」
「自分の読んでいる小説の続きをバラされたとしたら、腹が立ちませんか?立ちますよね?」

 彼女の大きな瞳から、いまの質問の答えが「腹が立ちます」の一択しか受け付けない圧を感じる。