だから、最初は街道を使うという案が出た。アレックスは、そう主張した。だけど、どうせベレー帽の男たちとは一戦交えなければならない。わたしたちが街道のルートをとり、彼らが裏道を追跡したとする。彼らは、わたしたちが馬車であることを知っている。ある程度の距離を追って追いつかなければ、すぐに街道に戻り、あらためて追跡を開始する。
 小説の中の追跡者たちは、たいていそうする。

 心配なのは彼らとの遭遇が遅くなればなるほど、あらたな追跡者たちとの遭遇と重なってしまうことである。黒幕は、あのベレー帽の男だけを黒幕に使っているわけではないはずよ。何人、何十人と用意しているかもしれない。黒幕がモリーナ王国の王都にいるとして、他の手駒を派遣する可能性は充分かんがえられる。