それとは別に、人口が多くて人の出入りが激しいわりには、他の地域よりずっと穏やかで平和なところも魅力的でもある。

 アニバルとアレックスが、隣国にあるこの街をわざわざ選んで隠れ住んでいるという気持ちがよくわかる。

 白い壁の家々を通りすぎている間にも、幾人もの住人たちとすれ違う。

「こんにちは」
「やあ」
「今日も暑いね」

 などなど、気さくに声をかけてくる。

 当然、こちらもおなじように返す。

 アニバルとアレックスのことを知っている人もいる。そういう人たちとは、二、三言言葉を交わす。

 アニバルとアレックスは、小説に出てくる潜伏者や諜報員同様にこの街にすっかり溶け込んでいるのね。