ごっそり本のない書架を通りすぎ、他のジャンルを見てみることにした。

 ジャンルごとにまとめられている書架の前に立ち、背表紙を睨みつけたり手に取っている読書好きたち。
 老若男女、だれもが真剣である。ときおり視線が合い、会釈したり微笑み合う。

 共通の趣味を持つ者どうしの無言の触れ合いも楽しい。

 本を選ぶときは、なるべく自分のジャンルには関係のないジャンルにする。というのも、同じハードボイルド系だと自信を無くしてしまうからである。あまりのレベルの差にうちのめされてしまう。

 違うジャンルであれば、違うジャンルだからと自分自身をごまかすことが出来る。

 ジャンルは違えど、基本は同じである。だから他のジャンルの作品が素晴らしいのは、わたしの想像力の欠如や表現力の乏しさから実力に差がでているだけなんだけど。