浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです～自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です～

「おれから言うことは、何もない」
「なんですって？」
「だから、説明することは何もないんだよ」
「ちょちょちょっ、ちょっと待ってよ。まだ何の説明をしていないじゃない」
「する必要がなくなったんだ」
「はいいいいい？」

　カルラの方を見ると、彼女も美しい顔に驚いた表情を浮かべてわたしを見ている。

「必要がなくなったって……」

　謎めきすぎている。

「つまり、きみらがさっき言ったことなんだ」

　アレックスは、そう言うと両肩をすくめた。

「さっき言った？ああ、小説の筋書きのあるあるね。えっ？まさか、小説のまんまなわけ？」
「まさか、そうなのですか？」

　嘘じゃないなら、恐れ入りすぎてしまう。

　もしかしたら、わたしってまさかの現世で死んで創作の世界にでも転生してしまったってこと？

　ここまで小説のまんまだと、かえってそっちの説を信じたくなってしまう。

　あぁ実は夢だった、なんてのもあるあるよね。