「きゃああああああああああっ!」

 全身が恐怖に支配されてしまい、悲鳴をあげることもままならない。

「ブヒヒヒーン」
「ぎゃあっ」

 そのとき、すぐうしろに迫っていた馬が嘶きとともに棹立ちになった。

 その拍子に馬上の男が振り落とされ、地面に向かって思いっきり背中からダイブした。

 片手でしか手綱を握っていなかったからよ。危ないったらありゃしないわね。

「くそっ!なんて金切り声だ」
「鼓膜が、鼓膜がワンワンなってやがる」
「耳が千切れるかと思ったぜ」

 向こうでは、三人が耳をおさえてなにやら意味不明なことを怒鳴りまくっている。

 ドジな落馬男は、地面でうんうんうなっている。