浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~

 そのとき、またうなじの辺りがイジイジしてきた。

 なにこれ?また前兆?

 女の勘というのかしら?無意識のうちに走る速度が落ちていた。そして、分岐点が見える手前で止まっていた。

 うなじのイジイジ感のことがある。念のため、大木の蔭に隠れて分岐点をうかがってみた。

 わお!

 ここでもまた、小説みたいなことが起っている。

 昨日の連中がいるのである。

 今朝は馬車は見当たらず、馬四頭は鞍を乗せている。

「もしかして、わたしを待っているの?」

 大木に背中を預け、そのまま地面に座り込んだ。

 夜露か朝靄で雑草が湿り気を帯びている。座り込んだ瞬間、ランニング用のズボンが濡れてしまった。布地を通して冷たさを感じる。

「キュキュッ」

 ロボが右肩で小さく鳴いた。

「大丈夫よ、ロボ」

 モフモフにそう言ったけれど、心の中は穏やかではない。

 もしもわたしを待っているのだとしたら、「なぜ?」という疑問がわく。