そこまで語ってからハッとした。
 
 いまは、わたしの作品の展望を語っている場合じゃないわ。

「ごめんなさい。つい熱くなってしまったわ」
「いいんだよ。気持ちはわかるから。とにかく、きみは好きでもないジャンルを真剣に読んでくれた。それだけでもうれしいのに、きみは作者のぼくでも気づかなかったことを、作中からしっかり読み取ってくれた。感謝してもしきれないよ」
「謝ってばかりだけど、嘘をついてほんとうにごめんなさい。じつは「白ユリの楽士」も、図書館であなたに出会う前にたまたまファンのレディたちから教えてもらったの。だけど、興味を持ったことは嘘じゃないわ」
「ああ、そうじゃないかなって思っていたよ」

 彼は、わたしの告白に気を悪くした様子もなく笑ってくれた。