「以上よ。ごめんなさい。まるで家庭教師の宿題の読書感想文みたいよね」

 まだ子どもの頃、家庭教師の先生に「この本を読んで感想を書きなさい」と、何冊もの本を読まされた。

 読書は大好きなので問題ない。だけど、その感想を紙に書きだし、それを読んで何になるのかなと不思議だった。

 十人いたら、十通りの感じ方がある。当然、感想だって十通りある。それはそれでいいんじゃないかと思う。それなのに、家庭教師はことあるごとに読書感想文を書くことを強要した。まだ子どものときだったので、不思議には思ったが言うことはきいておいたけれど。

 あれがもう少し年齢が上だったら、反抗しまくったに違いない。

 それはともかく、アレックスの反応が気になる。

 視線が合うと、彼はニッコリ笑った。その笑みは、どこか温かみと安堵感をあたえてくれる。