「もう充分浸れたわ。あなたのお蔭よ。いまは、料理が美味しすぎて話をするという行為をしたくないだけ」
「ありがとう。アニバルや他の人たちには、薄いだの辛いだのって言われるから。きみもそう思っていてぼくに遠慮をしてだまっていてくれているのかと思ったんだ」
「そんなことないわ。ほんとうに美味しい。カルラが結婚したら、お給金を奮発してでも作ってもらいたいくらいよ」
「ほんとうに?」

 彼は、ナイフとフォークを丁寧にお皿の上に置くと身を乗りだしてきた。

「ほんとうにそこまで思ってくれているかい?」
「え?ええ、ええ。ほんとうよ」

 なに?どうしてそこに食いついてくるの?
 ただのどうでもいい話なのに。

 どうせそんなつもりなんてないくせに。

 そういえば、さっき「アニバルや他の人たちには」って言わなかった?

 アニバルはともかく、他の人たちというのはレディたちに違いない。お付き合いしているとかファンとか……。