「ご、ごめんなさい。いまレディたちの間でだれもが夢中になっているほど人気のある「白ユリの楽士」シリーズの著者が、まさかあなただなんて……。信じられなかったのよ。いいえ。いまでも信じられないわ」

 街の図書館で会ったレディたちに、心から感謝せずにはいられない。

 あなたたちのお蔭で、すくなくともこれ(・・)を知っていたふりが出来るわ。

 ほんと、ギリギリってところだけど。

 それにしても、ペンネームだって女性だから余計にわからないわよね。

 って、わたしもペンネームは男性名を使っているから、人のことは言えないけど。

「じつは、ずっと読みたかった小説の一つなの。だけど、図書館で予約がつまっているのよ。この前、会ったときも、二か月先だなんて言われたばかりだった。信じられる?もちろん、本屋で入手も出来ないし。本屋も、予約をしたとしても入荷はずっと先だって」