鈴蘭を疑うことだけは……したくなかった。


 竜牙が、走って寝室へ行く。


 俺は引き止めることもせず、ただぼうっと立ち尽くしていた。


「……っ、夜明!」


 取り乱した声で名前を呼ばれて、急いで振り返る。


 嫌な予感が……止まらなかった。


 ま、さか……。


 おぼつかない足取りでなんとか寝室に行くと、そこには誰もいない寝室を見て震えている竜牙の姿だけがあった。


「信じてるも何も……」


 振り返った竜牙は、見たこともないほど怒りを露わにしていた。


「今の彼女は……夜明を夜明だと思っていないんですよ!?」


「…………」


 何も言い返せない。


 そんなこと、俺が一番わかっていたのに。


「至急捜索班に連絡をします」