【side 夜明】
鈴蘭が白神を俺だと認識していると聞いた時から……これが悪夢なら、早く覚めてくれと願っていた。
時が経つにつれ、嫌でも理解させられる。
これは……現実なのだ。
鈴蘭が妖術をかけられてから、目を離さないように俺はほとんど付きっきりで鈴蘭の部屋にいた。
鈴蘭も、俺が共にいることを受け入れてくれたことは不幸中の幸いだった。
それも……逆らったらどんな目に遭うのかと想像して、怯えているのかもしれないが……。
あの日から3日が経ったが、まともに睡眠も食事もとっていない。
竜牙や周りのやつらが無理やり休ませようとするが、眠れるはずがなかった。
妖術師の捜索も黒闇神家総動員で進めているが、手がかりは少なく、解く術も見つかってはいなかった。
このまま……鈴蘭の記憶が戻らなかったら。
そう思うだけで、恐ろしくてたまらない。
俺の世界は、当然のように鈴蘭を中心に回っていたというのに……その鈴蘭が、いなくなったら……。
この世界で生きていく理由すら、見失ってしまうだろう。
鈴蘭は女神の生まれ変わりとはいえ、物理的な能力は持っていない。