雪兎は責めるつもりはないんだろうけど、その発言は夜明にとって最悪の質問だろう。


 夜明はぴくりともせず、下を向いたまま動かない。まるで……屍みたいだった。


「夜明が鈴蘭様に少しだけひとりにしてほしいと頼まれてほんの少し目を離した隙に……さらわれました」


 そう、だったのか……。


「あの男……」


 放心状態の雪兎の隣で、美虎が歯を食いしばっていた。


 目が赤くなっていて、いつも以上に虎化がコントロールできていない。


 怒りの感情で体を支配されているみたいだった。


 充血した美虎の瞳が……夜明に向けられる。