私達は回収したクラス分の数学ノートを半々に分けて持ち、職員室へと向かっていた。
分けたら一人分が16冊程度しかないから、分ける必要がないと思っているけど…。
蓮とは久しぶりに単純な会話をしながら肩を並べて歩く。
「ねっ、久しぶりにデートしない?」
「デートって言っても、どうせ自宅でしょ?…私を襲うに決まってる。」
蓮は先生との関係を知ってるのに、どーゆー神経でデートに誘ってくるのか。
すると、蓮は半々にしていたクラス分のノートをヒョイと取り上げた。
「お前さぁ、そんな事ばっかり考えているなんて、エロだな。…ヤベー。」
イジワルな笑顔は相変わらず。
だから、小さな事でもペースが乱されてカチンとムキになってしまう。
「もーっ!蓮めーっ!」
「あはは。冗談だよ、ジョーダン!間に受けるなって。」
梓は手をグーにしながらふざける蓮を追いかけ回した。
だが、蓮は右に左にとおちょくるように振り返りながら、捕まらない程度の速度で逃げる。
付き合っていた頃はいつもこんな感じだった。
蓮が冗談を言って私が追いかける。
二人の笑顔が絶えなかったあの時は、本当に楽しくて幸せだった。
まぁ、悪夢を齎したのも蓮だけどね。
久々に二人で走り回ってるうちに、付き合っていた当時まで時計の針が戻ったような感覚に。
そんな彼の隣は、付き合っていた当時私には最も危険な場所であり、絶対的に安全な場所でもあった。