「ハーミリアさんのご家族にも同様のものが届いているはずですわ。私はこの場で渡したのは、ライオネル様がいらっしゃらないから、エスコート役をクリストファー殿下にお願いできないかと思ったのです」
「そういうことか! もちろん俺がハーミリアをスコートしよう」
「ありがとうございます、クリストファー殿下。私はお兄様のパートナーとして参加しますので、当日お会いできるのを楽しみにしてますわ」

 わたくしの意見などまったく聞かずに話が進んでしまう。
 このままではいけないと、不敬を覚悟で口を開いた。

「恐れ入りますが、マリアン様。わたくしは婚約者がいる身ですので、クリストファー殿下のエスコートを受けるわけにはまいりません」
「あら、それは問題ないわ。ライオネル様がご不在なのは王家でも把握してますから、これだけで不義だと追求しません。それよりも帝国の第二皇子であるクリストファー殿下が、おひとりで参加される方が問題でしょう? クリストファー殿下の世話役でもある貴女が適任よ」
「…………」
「では当日、よろしくお願いしますわ」

 わたくしがうまく反論できずにいると、マリアン様がニヤリと口角を歪めてこれで終わりだと押し切った。

 この夜会でクリストファー殿下のエスコートを受けたら、わたくしにとって嬉しくない状況になるのはわかりきっているのに、断る術がなかった。