ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

 しょんぼり帰ろうとしたとき、突然、日向がこちらを向いて、
「おねーちゃん、ばいばーい。
 また来てねー」
とガチャガチャのオモチャをつかんだまま手を振った。

「ま、また来るねっ」
とあかりは勢い込んで言ったが。

 単にCMになったので、ようやくこの姉のことを思い出し、振り向いただけのようだった。

 CMを飛ばさずにいてくれたのは、父の思いやりか。

 すぐにCMが終わったので、日向はまたテレビを見はじめた。

 ――ああ、もうちょっと日向と話したかった。

 でも、約束だもんな、と思いながら、あかりは玄関で靴を履く。

「あんた、これ、持って帰りなさい」

 真希絵が紙袋を渡してくる。

 おかずの詰まったタッパーがたくさん入っていた。

「ありがとう、お母さん」

「どうせ料理なんてしないんだろうから」

 そう真希絵が言ったとき、日向が走り出てきた。