最初は気に入らなかった嫁の母親だと言うのに。

 何故か、この真希絵さんには最初から好感を抱いていた。

 一生懸命生きている感じがしたからだろうか。

 ちょっと小市民的なところもいい。

 いや、小市民って。

 この人こそ、吾妻陽平の隠し子だったんだが……。

 でも、なにもかも明らかになっても、この人も変わらない。

 だけど、なんだかんだ言って、あの嫁のこともそう嫌いじゃなかったから。

 この子を育てた親なら、と信頼できたのかも。

 記憶喪失の息子の恋人だとかいう怪しささえなければ。

 いい子だと嫁のことも最初から思っていたのかも。

 嫁が淹れた珈琲を飲んだあと、日向を振り向いてなにか言っている真希絵さんを振り向く。