店がない。

 ある日、あかりの店に行った青葉は、そこがいきなり、もぬけの殻になっているのに気がついた。

 看板もない。

 まさか……ほんとうにネットショップにしたとか?

 いや、なにも聞いてはいないぞ。

「俺は浦島太郎か?」
と青葉は呟く。

 会社を車で出発して、ここに着くまでの間に、また頭を打ったり、記憶をなくしたり、取り戻したりして。

 実は100年経っていたとか?

 いや、もしかしたら、あかりや日向がここにいたことすべてが、俺の夢か妄想だったとか。

 すると、あかりは俺が作り出した理想の女……。

 じゃあ、ないな、と正気に返る。

 あかりのことは好きだが、何処も自分の理想とは合致していない。

 そう青葉が冷静になったとき、
「おにーちゃーんっ」
と声がして、ランドセルを背負った子どもたちが走ってきた。