あのぼんやり顔で男に騙されたとか、ピンと来ないな。
そういう女性にありがちな影も色気もないし。
……どんな男に騙されたんだろうな。
そして、その男、あんなアブラカタブラで、あり・をり・はべり・いまそかりで、マハリクマハリタな……
いや、マハリクマハリタはなかったな。
それは、従姉が子どものころ、教えてくれた呪文だった――。
そんな、あり・をり・はべり・いまそかりな女を騙すとか、どんな男だ、と青葉が、ぐるぐる考えているころ。
あかりは、ぼんやり青葉の乗った車を見送りながら、つまらぬ話をしてしまったな、と思っていた。
つまらぬ物を斬ってしまった、みたいなテンションで。
余計なこと言っちゃったな~と下がりそうになる気持ちを頑張って引き上げてみる。
――今日は最近ハマってる俳優さんが出るミュージカル、見に行くしな。
よしっ。
早めにお店を閉めれるよう、いろいろ頑張っとこっとっ、とあかりは中に入っていった。



