……思い出したいな、あいつとの記憶。
そんなことを考えながら仕事をしていた青葉は、書類を持って入ってきた来斗に言った。
「来斗、俺を殴ってみてくれ」
「えっ」
「頭打って、記憶を失って。
また、頭打って、記憶を取り戻し、一週間分の記憶だけ忘れたんだ。
もう一回打ったら、消えた記憶が蘇るかもしれん」
「いやそれ、全部忘れる可能性もありますよね?」
「いやまあ、そうだが。
上手く、そこだけ思い出せるかもしれないじゃないか」
そのとき、遅れて入ってきた竜崎がドアの向こうで聞いていたのか、身を乗り出して言ってきた。
「でも、上手くあかりさんのことを思い出せても、それ以外の記憶をすべて失ってしまうかもしれませんよ」
あかりとの一週間の記憶と引き換えに、今までの人生、すべての記憶を失う。
……それもいいかもしれない、と青葉は思っていた。
「それでも構わん。
今の俺にはあかりがすべてだ」



