「すみません。
 包み直してもらっちゃって」

 帰ろうとした瞬間にドアにぶつけて包みが破れた商品をあかりが包み直していると、おじさんは、そう言い、ペコペコ謝ってきた。

「いえいえ、いいんですよ。
 お気になさらずに」

 ――このランプのお店を始めてからの私の口癖は、
『いえいえ、いいんですよ。
 お気になさらずに』だ。

 まだペコペコしているおじさんを外まで出て、見送りながら、あかりは思う。

 お店のお客さんたちは、今のところ、いい人たちばっかりだ。

 この近くの商売繁盛なお稲荷さんにお参りしているから、ご利益があるのだろうか?

 それとも、昔、とんでもないことがあったから、その埋め合わせにいいことばっかり起こるとか――?

 店に入ったあかりは、天井からたくさん下がっているモザイクガラスのランプのスイッチを入れた。

 青やオレンジや緑の光が店内に広がる。

 キラキラした温かい光が白い天井や壁に映るのを眺めながら、

 あー、今日もいい一日だった――

 そう思った瞬間、すごい音がして、店の前の植え込みに車が突っ込んできた。