その夜。
あかりは夢の中、クレオパトラのような扮装で、エジプトのファラオの棺にすがりつき、
「しっかりしてくださいっ。
もう一度、起き上がってくださいっ」
私を見てっ、
と叫んでいた。
だが、いざ、棺の蓋が開きそうになると、恐ろしくて、慌てて蓋の上に乗ってしまう。
ミイラとなって起きあがろうとしているものは、過去の青葉ではなく。
押し殺していた自分の恋心なのかもしれない、とあかりは思った。
――なんでだろうな。
なにが恐ろしいのだろうか。
深く愛していた分、青葉が消えて辛かったから。
またあんな思いはしたくないと思っているからだろうか。
「や、やっぱり死んでてください。
起き上がってこないで」
なんでも叶う魔法の呪文を知っている。
それを唱えれば、もう二度と、この蓋は開かないかも、と思いながらも、それを唱えることはせずに、あかりはただ蓋の上に乗っていた。



