その日の夜も、青葉は、あかりの店に行ってみた。
「ああ、木南さん」
とカウンターの中にいて、スマホを見ていたあかりが顔を上げる。
「コバエは元気か」
「知らないですよ。
何処かに旅立ちましたから」
そこであかりは表情をくもらせる。
「日向もいつか親の元を離れて……
いや、私のことは姉だと思ってるんですが。
飛び立っていってしまうんですかね?」
「飛び立たなくても困るだろう。
っていうか、お前は、何故、コバエを見て我が子を思う……」
まあ、内容はともかくとして。
こうして、二人で日向のことを語るのは、ほんとうの夫婦みたいで、ちょっと嬉しくもあった。



