ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

「いえ、とんでもない」
と幾夫は、しんみりと語る。

「青葉くんとは、一度、電話で話したことがあったんです。
 彼が記憶を取り戻していなくなってしまう、少し前。

 あんなに熱く、
『娘さんを必ず幸せにします』
と語っていた彼の記憶がないことがなんだか不憫で――」

 こっちが泣きそうになりました、と幾夫は言った。

 あのとき、青葉を見た幾夫が青ざめたので。

 青葉は、娘の彼氏だと思われたのだと思ったようだったが、そうではなかった。

 幾夫は、愛するあかりと我が子、日向の側にいても、なんの記憶もない青葉が可哀想になって。

 泣きそうになるのを(こら)えていたのだ。

「突然、あかりの前から消えたことも。
 また現れたことも、なにも、彼のせいではないのですから」

 そんな父の言葉を聞きながら、

 まあ、敢えて言うなら、運転下手のせいですよね……、
とあかりは思っていたが、寿々花の手前、黙っていた。