ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

 あのときは、記憶を失っているときの青葉さんだけが、私の好きだった青葉さんで。

 記憶を取り戻した普段の彼は、冷徹な実業家だったんだ、と思って諦めたのだが。

 なんの運命か、猫とおばあさんを避けて、ここに車で突っ込んできた、この人は、

 自分が見ていた青葉となにも変わりなかった。

 仕事では、やり手だが。

 ちょっぴり変わってて。

 やっぱり、ぼんやりした人だった。

 子どもたちの前で、怪しいちちんぷいぷいの踊りを踊ってくれるくらいの――、

とあかりは、

「いやっ。
 あの踊り、お前の真似だからなっ」
と青葉に叫ばれそうなことを思う。