玄関の先から届いてくる、呑気な声。
雰囲気をぶち壊すには最高な声だった。

さすが“破壊神”とまで呼ばれた問題児。



「……碇、重いわ」


「っ…!すっ、すみません理沙お嬢様…!!」



ぱちんっと、目が覚めた。


飛び跳ねるように私の上から退いた執事の顔は真っ赤。

夕陽よりも真っ赤、私も同じ真っ赤。



『理沙ーー?留守なのーー?寝てるのーー?まだ17時前なのにっ!
もー、理沙ったらのんびりさんだねハヤセ』


『そうですね。また改めて伺いましょうか』


『きっと理沙、碇のことでいろいろあったんだよ。あまり触れないでおいてあげよう?』



モニターをつけてみれば、人の気も知らないで平和たるあっけらかんとした会話が聞こえてくる。

いろんな意味で腹が立ってくるバカップルがふたり。



『ええ、碇も最近は少し悩んでいるようでしたから』


『そうなの?理沙もツンツンしてるけどデリケートだから心配だなあ…』



なにを勝手に決めつけてるの。

心配だなあ…、じゃないわよ。