わたしは咄嗟にフランクスに頼んだ。
「フランクス、援護するからマリア王女を安全な場所までお願い!」
「わかった!」
上司である近衛騎士のカイルさんとともに、フランクスはマリア王女を連れて急いでこの場を離れる。
彼らの最優先任務は主人であるマリア王女の警護なのだから、なるべく早く離れてもらわなければ。
「アクア、お願い!ドラゴンへ怒り続けて!」
「ヴヒッ!」
わたしの言葉にわかった、と言わんばかりにアクアはさっそくブラックドラゴンへいななき始める……しかも、馬鹿にした顔で。歯をむき出しにし舌を出しながら。
……絶対、小馬鹿にしてるよね。
すると、ブラックドラゴンはますます怒り狂ったように見えた。アクアのからかいが効きすぎてるよ。
「ヴアアアオオオ!!」
(よし…!フランクスたちから十分な距離を取れた!)
狙い通りに、ブラックドラゴンの目がこちらへ向いた。何度も翼をはためかせたブラックドラゴンは、大きな口を開いて特大のファイアブレスを吐く。
「ごめん、アクア。便乗させてね!」
アクアの体にぴったりと抱きつき、なるべく身体を密着させる。すると予想通りに、ファイアブレスはアクアには効かずにわたしも護られた。
やっぱり、ユニコーンの仔がお腹にいるから、水の魔力で無効化されるんだ。
それでも、やっぱりわたしには十分には効かず熱かった。背中がじりじりと焼けるように痛いけど…こんなのは後で治る。
「ヴヒッ?」
「ありがとう、アクア。大丈夫だから」
心配げな目で見てきた愛馬に、痛みを堪えながらにっこり笑って見せた。



