けれどもそんな間もなく、ドラゴンが次のファイアブレスを吐いた。
「っ!」
「ミリィ、動くな!」
アスター王子がまとめて防いだ上に、何らかの魔術で無効化していくけれども……。
やっぱり魔力と体調が安定していないのか、ブレスの一部が地上に届いてしまうけど。それをアスター王子は剣を振って消していった。
「アスター王子、体は大丈夫なんですか!?」
「平気だと言ったろう。それよりも、おまえが皆を護るなら、オレがそんなおまえを護る」
炎に揺らめくアスター王子の横顔は、有無を言わさない強さがあって…。
どうしてか息が詰まったように胸が苦しくなって、ギュッと拳を握りしめた。
本当の女の子ならば、きっと泣いて喜ぶ言葉なんだろう。女性が強い男性を求めるのは、本能的なものだ。命を繋ぐのに大切なものだから。
でも、とわたしは一度目をつぶり目の前のアスター王子を見つめた。
「……ありがとうございます。でも、ぼくはやっぱり護られるよりも、ともに戦いたいです。あなたの隣で、剣を振りたいんです!」
アスター王子の横に立つと、模造剣を構えてブラックドラゴンを睨みつけた。
ブラックドラゴンはもう一度ファイアブレスを吐くべく口を開くけれども、やはりこちらを狙っている。
「ブラックドラゴン、やめなさい!他の意思に操られて誇り高き存在を穢さないで!!」
無駄かもしれないけれども、わたしは説得を続けた。ドラゴンは本来理知的な至高の存在。こんなふうに暴れて殺されるべきじゃない。
それに、さっき見せた瞳の揺らめきが気になる。もしかしたら。
「思い出して!ブラックドラゴン。あなた自身を。人間に操られてはいけない!!」



