(あれ…熱くない?)
もろにドラゴンブレスの直撃を食らったはずなのに、体はなんとも無かった。
炎のまばゆさで見えにくかった視界が戻るとわたしの目の前にいたのは、見慣れたプラチナブロンドの背中。間違いなく、彼がわたしを護ってくださった。
でも…。
騎士が従騎士を助けるため、貴重な時間を無駄にするなど言語道断だ。従騎士は騎士を助けるべきなのに。
「アスター王子!なぜ、ぼくを助けに来たんですか!他の皆さんの救助を優先してください!」
思わず上司を叱責すると、アスター王子は剣を構えたままフッと笑った声が聞こえた。
「さすがミリィだな、いつまでブレない。だが、大丈夫だ。他の近衛騎士もようやく駆け付けてきたからな」
アスター王子の言葉どおりに、王宮の近衛騎士たちの姿が20人ほど見えた。マリア王女付きのカイルさんと彼の従騎士のフランクスの姿も見える。
当然、彼らは一番に護るべき主であるマリア王女の元へ駆け付けた。
「マリア王女殿下、ご無事でよろしゅうございました。ですが、御身を御守りすべき近衛騎士でありながら、有事に御守りできず…申し訳もございません」
カイルさんはマリア王女へと深々と頭を垂れる。フランクスも合わせて頭を下げた。
「……面をあげよ。よい、もともとはわらわのわがままでそなたらを振り回した結果じゃ。このとおりわらわは大事ない。アスター兄上とミリュエールが護衛してくれたからの」
マリア王女は2人をそう言って許した。



