熱い。
背中がじりじり焼けるようだ。

でも、メダリオンに掛けられたアスター王子の加護の術のお陰で、マリア王女ともども難を逃れた。
わたしを中心に半径2メートルほどは、周りを燃やす炎が届かなかったから。

(ドラゴンのファイアブレスが地面に届いた…!なぜ?アスター王子が展開している魔術があるはずなのに)

去年の狩猟会では、アスター王子は御料地全体を覆うほどの結界を張っていた。それを考えれば、城の敷地を含めた広さの結界は容易いはずなのだけれど…?

「アクア、マリア王女、アスター王子!大丈夫ですか!?」
「ブヒン」

アクアはわたしの近くに居たからか、まったく無傷で平然としている。ブラックドラゴンが眼前に迫っていても、あくびすらする余裕はさすがだわ。

けれども、マリア王女から切羽詰まった声が出た。

「わらわは大丈夫じゃ!じゃが、アスター兄上の様子がおかしいぞ」
「えっ!?」

マリア王女を近衛兵に預けてすぐにアスター王子を見遣ると、彼は剣を構えながら大声で近衛兵に指示や檄を飛ばしている。

けれども……顔が真っ青で、汗だくだ。マリア王女のおっしゃる通りに様子がおかしい。時折、苦悶の表情も垣間見える。

「アスター王子!大丈夫ですか!?」

駆け寄って心配すれば、彼はニッと余裕そうに笑みを浮かべる。

「大丈夫だ。これくらいは実際の戦場に比べれば、大したことはない」
「ですが、結界が不安定ですよ?ドラゴンのファイアブレスがこちらまで届いたのは、やはり調子が悪いからではないのですか!?」