【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


反射的にローズ様を見ると、トムソンが彼女を庇うように構えてる。そして2人の視線の先にいたレスター王子は、あろうことか腰に下げた剣を抜いてアスター王子に向けていた。

レスター王子はろくに訓練なんてしたことがないから剣の握りも構えも適当だし、剣も派手さを優先した装飾が豪華な儀礼用の細身の剣だ。

でも、それでも。鍛えてなくとも成人男性だ。
剣だって儀礼用とはいえ本物。
力まかせに振り回せば、怪我を負わせることができる。

「よくも……貴様ああぁッ……!!」

考えるよりも先に、体が動いてた。

自分の腰に下げた鞘から摸造剣を抜くと、アスター王子の前でレスター王子の剣戟を受けた。やはり、成人男性の一撃は重い。でも、わたしも従騎士の端くれ。この一年だてに鍛錬に明け暮れてはいない。強く踏み込んで彼の剣を押し返した。

「ミリィ!!」
「み、ミリュエール……!?」

アスター王子からは心配する声が、レスター王子からは困惑の声が聞こえた。

わたしはアスター王子の前で摸造剣を構えながら、レスター王子をキッと見返した。

「レスター殿下……あなたはそこまで愚かでいらっしゃるのですか!?人の上に立つお立場であるご自覚がおありならば、感情に任せて抜刀などなさらないことです!王族ならばより冷静に客観的に物事を見るべきでしょう。まして、ご兄弟を斬るなど……その行動次第で、国が割れる危険性にすら思い至りませんか!?」