【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


一応、助けてもらったからにはきちんとお礼を言わねば。

「アスター王子……ありがとうございます。助かりました」
「いや、困ったならいつでも頼れ」
「いえ、自分が悔しいです。こんな小さな子どもも抱え上げられないのか…と。非常時には大人すら抱える必要もあるのに…情けない」

アスター王子に対する意地もあったのもかもしれない。自分はできるはずだと思ってはいても、やっぱり現実は厳しくて…本格的に騎士見習いになった1年、血の滲む努力をしていても、男女差を実感するばかりだ。明らかに筋力の付き方が違う。

「ミリィ」

悔しすぎてすこし涙が滲んだわたしの頭をアスター王子はぽんと軽く叩いた。

「性差はどう頑張っても埋まるものじゃない。だが、おまえの頑張りは確実に身になっているはずだ。1年前は、マリアくらいの重さは抱えるのが精一杯だったろう?それが、あと少しまで持ち上げることができたんだ」
「……そう、ですね確かに、騎士見習いの当初はまだ無理な重さでした」
「だろう?この一年でおまえもずいぶん成長しているんだ。理想が高くそれに向かって努力するのはいいことだ。だが、どうも焦りすぎる傾向がある。努力は自分を裏切らないのだから、あまり自分を追い込むな」

アスター王子の言うことは至極もっともで、正論だった。確かに、わたしは自分を追い詰める癖がある。

「あまり自分を追い詰めると、余裕が無くなり冷静さを失うぞ?騎士にとっては致命的にもなる。もう少し長い目で自分を見るんだ」
「……はい、確かにそうですね。ぼくはちょっと焦りすぎていました」