【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「……ということですが、アスター王子。よろしいですよね?」

一応、上司にはお伺いを立てる。変態でも正規の近衛騎士であり、責任ある立場にもあるのだから。

「まあ、構わないが……」
「ありがとうございます。ではマリア殿下、じっとなさっていてくださいね?」

自分でも声が低く淡々とした言い方の自覚はあったけれども、何を覗かれていたかわからない以上アスター王子への怒りを抑えるのは無理だった。
いくら女の子っぽくない自覚はあったとしても、他人…ましてや、男性に見られたくないプライベートかつデリケートな場面はある。
それに…アスター王子だからこそ…なおのこと腹立たしかった。

「おい、ミリィ……怒ってるのか?」
「はい。マリア殿下、そのままでいいですよ」
「うむ」

子どもっぽいのはわかってるけれども、アスター王子をキッと睨みつけてからマリア王女を両手で抱き上げる。

ただ、予想外の事態になった。
アクアは妊娠中だから伏せはさせないままマリア王女を背中に乗せようとしたけれども、元々馬の背中までの高さは人間の身長くらいの160〜170センチ前後。アクアは標準より大きいから、プラスでいくらか高い。

わたし自身の身長が普通女性より少し高めな程度だから、30キロ近くあるマリア王女を自分の背より高く持ち上げて馬の背に乗せるのは、思ったより時間がかかりそうだったけれども…。

「マリア、万歳してみろ」
「こうか?おおっ!」

アスター王子がマリア王女の脇に手を差し込むと、あっという間にアクアの背中に乗せてしまった。