ふと視線が気になってマリア王女を見れば、彼女はキラキラと目を輝かせている。ずいっと顔を寄せられて、思わず体が仰け反りかけた。
「すごいのぅ、ミリュエール!そなた、馬の言葉がわかるのか?」
「いえ、別に馬の言葉は理解できませんが…アクアは彼女が生まれた時から一緒に居ましたから…なんとなくわかる、くらいですよ」
そう、アクアは生まれて5分もしないうちに立ち上がり、しっかり歩くどころか小走りしたとんでもない身体能力があった。
そしてわたしと目が合った瞬間、小馬鹿にしたような笑み。それを見て、お父様に「この子馬をください」とお願いをしていた。
勝ち気でわがままで気まぐれで……。
とんでもないクセ馬だったから、馴致(じゅんち、人を背に乗せる訓練)の時も、なかなか人を乗せなくて、暴れるわ脱走するわで大変だったけれども。わたしが1から徹底的に教え込んだ。
落馬の対処に慣れたのも、アクアのおかげかな…。
わたしの話に、マリア王女は感心しきりだった。
「ほう……幼き頃よりともに育ち、騎士を目指すか。なかなかよいパートナーのようじゃな」
「はい。アクアほど騎馬に相応しい馬は居ないと思っています」
「懐妊中が残念じゃのう。わらわも乗りたい見事な馬体じゃし、何より美しい。のう、アクア。そなたはなんと綺麗な馬じゃ…今まで見たことがないぞ」
マリア王女の褒めちぎりに、当然アクアはキラキラと目を輝かせた。
「ブヒュヒィン」
「乗ってもいいそうですよ」
「そうか、そうか!さすが頭も良い賢い馬じゃのう!並外れた知性がにじみ出ておる」
「ヒヒヒン」
アクアはこれでもか、とマリア王女におだてられてめちゃくちゃ気分良さそうだ。



