【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「アスター王子、ありがとうございます。ぼくを庇ってくださって」
「い、いや…じ、上司として当たり前だから…な」

ゴホン、と咳払いをしたアスター王子は、わずかに顔が赤い。照れ隠しをしている姿が、なんだか可愛く思える。クスッと笑ったわたしは、アスター王子をじっと見てみた。

「な、なんだそんなに見て……」
「いえ、おしおきはどうしようかな〜と思いまして。ぼくは、今朝からの変態行為をまだ許したわけではありませんからね?」
「変態じゃない!」
「はいはい」
「おい、なんだそのどうでも良さげな顔は…」
「事実そうじゃないですか」
「……おまえな、一応、オレは上司で王族なんだぞ?」
「騎士になれば関係ないじゃないですか。それ以前に、もっと尊敬に足る存在になってくださいよ」
「耳をほじりながら言うな!」
「ブヒヒヒヒン!」
「……あれ?」

聞き慣れた笑い声というか、いななきというか。その、人を小馬鹿にしきった音は……。

いつの間にか中庭に、お腹を大きくしたアクアの姿があった。
全身の何もかも…たてがみや蹄までもが真っ白。そして、瞳は青い。見事な白毛馬で、馬体は牡馬より大きく立派な体格だ。

彼女は時々厩舎を脱走して気ままに王宮散歩を楽しむらしいとは聞かされていたけれども…。

「おまえ、また馬房から脱走したの?」
「ヒヒヒン」
「そっか…やっぱり退屈なんだ。放牧をもっと増やしてもらえるよう、馬丁さんに頼んでみるよ」
「フュヒヒン」
「うん、わかってるよ…さ、馬房へ戻ろうか」

わたしが軽く首筋を叩くと、アクアは目を細めていなないた。