つまらない…なんて言われたのは初めてで、チクリと胸が痛んだ。
「おい、マリア…それは言い過ぎだ」
アスター王子が見かねたのか、低い声で注意をしてくださった。
「騎士になるのがどれほど大変か、知らないのは仕方ない。だが、ミリィほど騎士になる努力をしている者はめったにない。男ばかりの世界で、女というハンディを跳ね返そうと、どれだけ血の滲む努力を重ねているか…オレは知ってる。だから、そんな彼女を貶めることは、オレが許さない」
先ほどまでの情けなさが信じられないほど、彼は力強く言い切った。
「マリア、ミリィの事を悪し様に言うなら、オレは許さないからな?」
静かな怒りを滲ませたアスター王子の迫力は、凄まじいものがあった。
普段はおちゃらけて親しみやすいけれども、そのぶん本気で怒った時のギャップがすさまじい。
……そうだ。
アスター王子は自分の時はどれだけひどく言われたとしても、軽く怒るふりをしても、本当に怒ってはいなかった。
でも、今。
マリア王女がほとんど軽口でわたしをつまらない、と言っただけなのに……彼は、アスター王子は……本気で怒ってくださったんだ。
わたしの努力を……知っていて。
なんだろう……
嬉しい。
アスター王子が怒って下さったことが、とても嬉しく感じて…胸がぽかぽかと暖かくなった気がした‥



