しかし、よりにもよってさらにややこしくなる方がホールに登場しました。
「ミリィ?ここで一体どうしたんだ…!?」
近衛騎士の赤い制服に身を包んだ、わたしが仕える騎士であり第3王子であられるアスター王子がこちらへいらっしゃいました。相変わらず輝くばかりのプラチナブロンドと、湖の水のような瞳。完璧と言える造形の麗しきお顔と、理想的なバランスの引き締まった御身体。あーやっぱりローズ様が頬を染めてらっしゃる。見た目は完璧なんですよ。見た目は…ね。
そして、アスター王子は兄王子が68歳の熟女と熱い抱擁をしているのを見て、案の定すべてフリーズしてらっしゃいますね、うん。
「レスター兄上……実はジニ殿に懸想(けそう)されていらしたんですね」
アスター王子がそう声をかけると、ハッと我に返ったらしいレスター王子が真っ青な顔をして体を震わせる。
「レスター殿下……そんなにあたくしのことを……ええ、身分の差も年の差もございますが……老い先短いあたくしでよろしければ……」
頬をバラ色に染めて瞳をうるませたジニさんは、もじもじと照れながらレスター王子に流し目を送ってる。
普段から迷惑をかけられている仕返しか、アスター王子はいい笑顔で兄王子を煽った。
「よかったですね、レスター兄上!これで晴れて相思相愛ではないですか。早急に婚約の儀を整えねばなりませんね」
(え、婚約の儀?)
初めて耳にする言葉に気を取られてアスター王子をチラッと見た瞬間、ローズ様の悲鳴がホールに響き渡った。



