マリア王女はメダリオンをしばらく見つめた後、指差しながらかかっている術を教えて下さった。
「ひとまず、これには加護の術がかかっておるな。万能ではないが、そなたの身を護るものじゃ」
「加護の術…」
言われてみれば、去年の夢の国事件でも不思議な事がいくつかあった。襲われた時にダメージが少なかったり…このメダリオンを身に着けていたから、だとしたら、アスター王子に感謝をしなければ。
「それから…ふむ?」
マリア王女はじっとメダリオンを凝視してから、またわたしの顔を見てにんまり笑う。
「そうか、そうか!ミリュエール、そなたずいぶんアスター兄上に愛されておるようじゃの?」
「は?」
マリア王女はひとり納得したように頷いてらっしゃいますが……一体なんの事か、と訝しく思う。
「あの、マリア殿下……一体なんのお話ですか?」
「心配するな、間もなくミリュエールを迎えにアスター兄上が来るじゃろうからな…ほれ、来たぞ」
マリア王女が視線で示した先には、本当にアスター王子の姿が見えた。
「すごいです。よくわかりましたね?」
「なに、アスター兄上の単純さを考えればすぐわかることじゃ」
ふんっ!と鼻息荒く得意気になる彼女は、やっぱり大人びていても年相応で可愛らしい。
「そうですね。確かに、扱いやすくありますよね」
わたしがマリア王女に同意すると、「へっくしょん!」とアスター王子が盛大なくしゃみをした。稀代の英雄が台無しだ…。
「おーい、アスター兄上!ミリュエールはここじゃぞ!!」
よりによってそのタイミングでアスター王子を大声で呼ぶマリア王女……いい性格してますよね。



