【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「正直な気持ちを申し上げますと、まだわかりませんね」
「ほう?わからない…ときたか。気持ちが定まってないようじゃのう?アスター兄上との婚姻が嫌だとか言う気持ちはないのか?」
「………」

すぐには答えられないでいると、マリア王女はわたしの胸もとをじっと見てから指差した。

「そこに、マジックアイテムがあるのではないか?」
「え、マジックアイテム?そんなものは持っていまはせんが……」

マリア王女が指差した場所に触れると、慣れた感触がしてそれを襟元から出して見せた。

「ただのメダリオンですよ?」
「その肖像画は…アスター兄上か!」

メダリオンを見たマリア王女が、なぜかにんまりと笑う。いい予感がしないのは気のせいじゃない。

「実はのう、わらわも少しだが魔力があるのじゃ」
「え、そうなんですか?」

マリア王女の告白は意外なものだった。
パグウェル司祭様の話からすれば、この国には魔力を持った人間がほとんど生まれず、魔術師が不在という話だったのだし。ノプット出身のソニア妃とその御子であるアスター王子くらいしかいなかった。わたしが知る限りでは。

だから、魔術に関する授業も基礎的なものしかなかったし、実際国内にいれば相対することはほとんどない、と騎士見習いの皆は思っているし、わたしもそう考えていた。

「それで、パグウェル司祭様を訪ねていらしたのですか?」
「それもある。国内では魔術関連の指導を出来る者がおらぬからのう。まぁ、わらわの魔力は微々たるものではあるが…それでも、そのメダリオンに数々の魔術かかけられておるくらいはわかるぞ?」