ハッキリ言って相手にする必要は一切無いし、できたらスルーしたいけど。仮にも一国の王子殿下。騎士を目指す以上無視するわけにはいかなくて、仕方なく膝を着いてトムソンとともに騎士の礼の挨拶をする。
ローズ様もさすがに王子殿下の登場で淑女らしく頭を軽く下げてドレスをつまみ上げてた。
「ふっ…ボクが美しいからって見惚れるのは仕方ない…が、ミリュエール。キミもバラのように美しい…美しい者同士が惹かれ合うのは自然なことだよ…さぁ、遠慮なくボクの胸に飛び込んできたまえ!!」
なんか、レスター殿下がまたうわ言をほざきながら、こちらへ向けて両手を広げてる。うわわ…!ずんずん近づきながら…抱きしめようとしてきたあああっ!!
当然、わたしはヒョイッとすぐに避けて差し上げました。
結果……
「ああ、なんて素晴らしい抱き心地なんだ…でも、縮んでないかい?アスターにいじめられてろくに食べさせてもらえないんだね…かわいそうに…ボクの愛でキミを包んであげよう!」
「あら、まぁ。レスター殿下……あたくしにそんな熱心に求愛されるなんて…いけませんわ。あたくし…ひ孫娘もいますのよ…」
レスター殿下は、わたしに仕事を持ってきた古株の女官ジニさん(御年68歳)を抱きしめていて。
「レスター殿下ってそんなご趣味が……」
とローズ様が青い顔でドン引きしてる。これで、明日には社交界でレスター殿下が熟女好きとの噂が広まり、ますます縁談は遠のくだろう。



