ゼイレーム王国とフィアーナ王国は、およそ20年前まで国境紛争をしていた。
フィアーナ王国自体が十数年前まで、内戦状態にあったのだけれども。現在の女王であられる、ファニイ・フィアーナ・ローズマリン陛下が即位されてから強力な指導力を発揮され、連合王国をまとめ上げ見事内戦状態を終わらせた。
ただ、それでも野心を持つ人間は後を絶たない。
特に、連合王国になる以前の国の首長や王族だった人間でプライドが高ければ、他人に従うのを良しとしない者もいるだろう。不満を抱き、下剋上を狙うのは自然なことかもしれないけれども。
それが民主的な手段ではなく、武力で強引な手段に出るとしたら。
実際、数年前に隣国のノイ王国がフィアーナの内部撹乱で国境の地を治めていた公爵領で悪しき事件が起きた。当時王太子であられたメイフュ殿下や、後に女公爵で王妃となられたリリィ様の活躍で、なんとか事なきを得たみたいだけれども。
その時、ゼイレームもあわや侵攻されるか…という危機があった。
それを防いだのが、単騎で100の兵を打ち負かせ撤退させた、アスター殿下のアスカーガの戦いだった。
それから数年。
国境防衛に力を入れたノイ王国からは不穏な噂は聞かないけれども…だからこそ、フィアーナはゼイレームに目をつけた?
いえ、具体的に言えばフィアーナの中にいる野心家が。
「もしかしたら…フィアーナがまた不穏な状態になっているのでしょうか?」
「その可能性は否定できませんね。ファニイ女王陛下の求心力はますます高まり、盤石の地位を築かれてらっしゃる。かつて権力者の地位にいた者には面白くないでしょう」
パグウェル司祭様からも同意を得た。



