パグウェル司祭様は「そうですか」とおっしゃると、しばらく口をつぐむ。逡巡の間があって、再び口を開かれた。
「エストアールさんがアスター殿下の秘されてらっしゃる事を打ち明けてくださったのですから、こちらも秘事を明かさねばフェアではありませんね」
「はい?いえ、そんな大げさな事では…」
なにかパグウェル司祭様の中では大事になっているみたいだけれども、わたしとしては魔力のコントロール方法さえわかれば済む話なのですが。
「この話を聴けば、あなたも納得されると思いますよ」
「はい…?」
パグウェル司祭様は居住まいを正してまっすぐわたしを見据えられてきたから、わたしも姿勢を正し司祭様の視線を受け止める。
「去年辺りから、ユニコーン等の幻獣が出没する頻度が上がっていることはご存知ですよね?」
「はい。現にぼくも去年ユニコーン密猟事件に関わりましたから」
ソニア妃殿下やアスター殿下をはじめ、アクアやピッツァさん、そしてわたしが関わった悲しい夢の国事件。22年前に密猟されたユニコーンが命を落とす直前、ソニア妃殿下の身に宿っていた2つの命のうち、片方の命を使って生きながらえた…けれど。
その命はユニコーンの中でアスタークという別の人格を生み、成長しない無邪気な子どものまま…16年前に御母上のソニア妃殿下を夢の国に連れ去り、15年もの長い間ソニア妃殿下は眠り病にかかって眠り続けたんだ。
アクアがユニコーンと交流する傍ら、アスアークはユニコーンの無意識のうちにわたしに夢の国に来るよう誘いをかけ…
去年の国王陛下主催の狩猟会の最中、夢の国に入り込んだみんなの活躍で事件は終結。
ソニア妃殿下は目覚め、ユニコーンから命を還されたアスアークは改めて彼女のお腹に宿り、新しく生を受けた。そして絶命したユニコーンの仔を、アクアは受胎してる。



