魔術の基礎的な授業を受けた後、司祭様を呼び止めて質問をした。
「お忙しいところ申し訳ありません。魔術について質問があるのですが、お時間はよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ、エストアールさん。何でしょうか?」
白い法衣を身に纏った司祭様はずっとこの講堂で見習い騎士に講義をされてきた、御年60を過ぎたであろうパグウェル司祭様。穏やかに笑む顔しかしらないけれど、深い知性を感じさせるお方だった。
「はい。魔術のもとになる魔力についてですが…これは、生まれつきなのですよね?」
「それは、難しい質問ですね」
パグウェル司祭様は意外な答え方をされた。
「従来では魔力は生まれつき…遺伝的なものだ、という考えが主流でした。実際、魔術師は同じ家系から生まれることが多かったものですから。
ですが、ここ100年はこのゼイレーム王国では魔術師が一切現れてはいません。なぜか、どんな名門の魔術師の家系でも魔力ある者が生まれて来なかったからです」
「え、そうなんですか!?」
初めて聞く話だった。確かに魔術師に関する話はほとんど聴いたことはなかったけれど、まさかそんなに大事になっていたなんて。
「じゃあ、20年前までの他国との戦争は……」
「他国から雇い入れた魔術師が活躍しました。ノプット出身のソニア妃殿下が騎士になられて魔術師としても活躍したゆえ、ようやく戦争は集結しましたが…御子様のアスター殿下も魔力をお持ちなのは、やはりお血筋ゆえでしょう」



