(今日の授業は…と)
早めに講堂に行き席でテキストを捲くると、今日の授業はピンポイントで魔術に関してだった。
(なになに……)
魔術は一年前から度々取り上げられてはいるけれど、やはり騎士を目指す人で魔力持ちはほぼ居ないため、実際に使う方法より対峙した際の対処方法ばかりだ。
魔術に関する基礎は網羅されているけれど、漠然とした概念のみ。
(うーん…司祭様に聞いてみようかな)
それでもなにかヒントが無いかテキストを読み込んでいると、ポンと肩を叩かれて顔を上げればフランクスが片手を上げて挨拶してきた。
「よ、ミリィ。ずいぶん早いし熱心だな」
「おはよ、フランクス。別に普通だよ…あ、そうだ」
フランクスに訊こうと思っていた事柄をすぐに思い出した。
「フランクス、ちょっと訊いていい?」
「ん、なんだ?」
「きみ、騎士見習いの独身寮にいるよね?」
「ああ。小姓時代から部屋は変わらないけどな……それがどうかしたか?」
小姓時代から独身寮に住んでいるならば、交友範囲の広い彼のこと。だいたいの人の出入りは把握してるはず。
「この1年で騎士に叙任された従騎士やいろんな事情で辞めた見習いもいたよね?」
「そうだな。近衛騎士団の独身寮だけで言えばだいたい100人くらいだな」
「で、今年の4月にはいった見習いは……だいたいでいいから人数わかる?」
「まぁ、ざっくりとなら……80人くらいじゃねえの?」
「なら、当然部屋は空いてるよね?」
「そうだな…俺の右隣が空いたままだな」
フランクスの証言から、やはり騎士見習いの独身寮は空きがあることが判明した。



