【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「それは違う!」
「じゃあ、なんだとおっしゃいますか?」

慌てて言い訳をしようとするアスター王子を冷たい目で見ると、彼はようやく内心を吐露した。

「…ミリィに負担をかけたくなかったからだ」
「ぼくに、ですか?」
「魔力の制御には様々な困難が伴うし、危険もある。適当な場所で攻撃魔術をぶっ放したり、それ以外にも様々な方法があるが、どれも魔力が無い者が近くにいると命の危険すらある方法ばかりだ。それに、そもそも制御出来なかったのはオレの不甲斐なさからだ。だから、ミリィにまでその分負担を掛けたくなかったからだ」

そして、小さな声でなにか「カッコ悪いし…」とか聴こえた気がする。

「だから、最近夜遅かったんですか……」

言われてみれば、ここ1週間アスター王子は帰りが異様に遅かった。ご婚姻の儀に関連して多忙なせいだと思っていたけれども。

「そうだ。だから、別に夜にやましいことをしていたわけじゃないからな?」

なぜかアスター王子は妙に強調をしてきたけれど、それはどうでもいいからスルーをして、考え込んだ。

(確かにわたしには魔力も知識もないけど……アスター王子の役には立てるはず……)

アスター王子の従騎士なんだから、彼が困難な状況ならば一緒に解決する手助けをするのは当然だ。

それに騎士を目指すならば、困っている人を見捨てるなど言語道断。わたしはうん、と頷いてアスター王子を見上げた。

「……わかりました。ならば、ぼくも魔力制御のお手伝いをします」
「……そ、それはありがたいが。おまえは魔力が」
「はい、確かにぼくには魔力がありませんが、何らかの方法はあるはずです。1人より、2人ですよ。頑張ってコントロール方法を探しましょう!」