「やぁ、賑やかだね!」
げ!と変な声を上げそうになった。
一見理想的な金髪碧眼の王子様が盛装をして、歴史ある宮殿のホールに佇む…絵になるシチュエーションだけど……その肝心の王子様の中身が至極残念。
空気を読まずいきなり登場したのは、一年前わたしの婚約者だったレスター・フォン・ゼイレーム第2王子だ。
王妃様の長子にして、もっとも王太子に近い、と言われてた王子様だ…かつては。
3歳の頃からの婚約者だったソフィア公爵令嬢との婚約を3年前に一方的に破棄した。そして1年前にはわたしとの婚約破棄をした。
2度の身勝手な婚約破棄をした通りに、レスター殿下はわがままな放蕩王子。周りがちやほやするから、つけあがって身分と顔だけ王子になり、逆にアニタ準男爵令嬢からさえ捨てられたんだよね。
3度も婚約破棄した上に、母王妃様と父国王陛下からさえ見限られた放蕩わがまま王子。
以前はモテモテだったレスター殿下も声をかけても着いてくる女性はすっかりいなくなったらしい。
……で。
なぜか、去年秋辺りからわたしが行く先々でレスター殿下を見かけるようになってる。
今も、こうして遭遇するのはもはや偶然じゃないよね、絶対。
「やあ、ミリュエール。奇遇だね。今日もキミは夜空に輝く月のように美しいね」
歯が浮くような寝言をほざくレスター殿下……
そりゃあ、わたしはお母様譲りのシルバーブロンドとシルバーの瞳を持っていて、黙っていれば美少女らしいけど。
彼から言われると、鳥肌しか立たないんですが。



