ところが、わたしが部屋を片付けている間にアスター王子が着込んだのは、近衛騎士の制服。
赤を基調にした詰め襟のそれを一分の隙もなく着たアスター王子は、すっかり仕事モードの空気を纏っていた。
「アスター王子、仕事に行かれるんですか!?まだ熱は高いんですよ?」
「平気だ。これは病気などではないから、通常業務に差し障りはない」
アスター王子がそうは言っても、まだ顔は赤いし目も少し潤んでますが。
それにしても、病気ではないとなると……。
わたしはハッと気付いてアスター王子へ指摘した。
「王子……もしかして、魔力がうまく制御できていないんですか?」
わたしがそう言えば、アスター王子の身体が微かに揺れる。彼は無表情を貫いてるけど、わたしに隠そうとしても無駄ですからね。
「ソニア妃殿下からすべてお聞きしました。だから、隠そうとしても無駄ですからね?」
わたしが腰に手を当て笑顔でプレッシャーをかければ、観念したのかアスター王子はため息を着いて渋々認めた。
「母上からか……なら、隠しても仕方ないか」
「はい。アスター王子のこと、色々お聞きしました。裸で歩き回るのは先祖代々の伝統とか」
「妙な伝統を作るな!」
「でも、御母上様もそのお母様も、そのまたお母様も、よく裸でいらしたんですよね?」
「……そ、それは否定できないが……」
「原因は魔力の制御がうまくいかないから、とお聞きしました。じりじり焼けるような熱さとか…だから、あなたも裸でいらしたんですよね?」



