「あれ…なんだろう?」

怒りの興奮からだと思うけど、心臓がドキドキしてる。背負投げ程度の動きではなるはずがないし……。

床に落ちていたダルマティカを急いで着てから、そっと胸に手を当ててみた。

やっぱり。トクトク…と小さな鳥の鳴き声の様にさざめいてる。
けど、心なしかアスター王子に直に触れられていた肌にも……熱…ぬくもりが残ってるような?

(なんだろう……これ?)

少しだけ、落ち着かない気分になる。

今までアスター王子には何度も(不本意ながらだけどね)裸で抱きしめられてきたけど、こちらはいつも服をちゃんと着込んでいた。
けど、今日のようにわたしまで裸で……なんて初めてだ。

(昨夜は確かに上の下着の上にダルマティカをしっかり着込んだし、いったいどうなったら脱がされるわけ…!?)

自分で脱いだ覚えはない以上、同室のアスター王子に脱がされたとしか思えない。そう思うと、改めてムカムカと怒りが湧いてきた。

(自分が裸が好きだからって人を巻き込むな!!)

お仕置きはどうしようか、と思案しながらいつもどおりに騎士見習いの制服に着替えると、手早く乱雑な部屋を片付けてから厨房へお湯を分けて貰いに行く。木桶にちょうどいいぬるさのお湯を満たしたころ、バタン!とドアが開いて全身土まみれのアスター王子が姿を現した。

「おはようございます。身体にマントを巻いてくるなんて進化しましたね」
「ミリィ……うぷっ!?」

恨みがましい目と声は、顔にタオルを投げつけて封じ込めた。

「はい、はい。さっさと身体を綺麗にして着替えてくださいよ。ぼくの服を剥ぎ取った言い訳も聞かなきゃなりませんからね?」

ジロリ、と冷たく白い目で睨みつけて差し上げました。